『いたずらっぽいあの娘のパンチラ』
それは春の少し暑く感じた温かい日のできこと。
いつも日常的に使っている駅の構内で手に持ったジャケットが腕を保温することに鬱陶しさを感じながらこれまた億劫になる上り階段に足を掛けた時だった。
いつもと同じ時間、同じ通勤路、同じ行動をしている自分にとって見慣れないモノがそこに在った。
女学生の後ろ姿、それだけなら特に気にもしないが彼女のスカートは下手に覗こうとしなくともその下に存在する淡い紫色の薄い布地が見えてしまっているのだ。
マナーとして視線を逸らそうとしているのだが、無意識にチラチラとそちらを見てしまっている自分に呆れながらも、そのまるい健康的な臀部に眼福でしたと心の中で合掌をする。
彼女が肩越しにこちらを振り向き、こちらの視線に気が付いたのような気がするが特に慌てたり隠したり逃げたりしなかったので薄布の鑑賞をしていたことには感づかれなかったのだろうと考え、後はいつも通りの通勤時間に戻る筈だ。
先ほどの事はちょっとした嬉しいハプニング程度に考えた。
電車を待っている合間にふと先ほどの彼女の方を見ると視線が合ってしまう。
変に怪しまれないように慌てて視線を外すことはないが、見られていることに先ほどのパンチラを意識してしまう。
罪悪感から居心地の悪さを感じていたため電車がやって来て内心胸を撫でおろした。
彼女の視線から逃れるためにも急いで電車に乗り込む。
通勤ラッシュにはまだ少し早いこの時間帯、乗っている人はまばらで余裕を持って座ることができるのだが、自分が座った正面に先ほどの彼女が脚を組んで座る。
電車が動き出し、スマートフォンを触っている正面の彼女は上目遣いでこちらを確認しているようだ。
その彼女の視線に痴漢騒ぎからの社会的死を連想している自分は今日は暖かいというのに背筋に寒気を感じている。
悪戯っぽく笑っている彼女に自分は先ほどの想像で恐怖していた。
冷静に考えれば偶然パンチラを見たからと言って訴えられることは無いだろうし、痴漢冤罪だって昨今話題になっており冷静に対応すれば問題は起こらないと自分自身を落ち着けようとしていた。
そんな風に自分を納得させようとして正面の彼女を観察すると違和感を覚えた。
笑っている?
もし、自分を敵対的に見ているのなら笑顔向けることなどあるだろうか?
もしくはそれこそ痴漢冤罪を吹っ掛けるような獲物を見つけたら笑顔を向けるだろうか?
どちらも違うのでは無いかと疑問に感じていると彼女が動いた。
組んでいた脚を開いて座りなおしたのだ。
本来、人目に触れるべきでない薄い布地を隠すのに頼りない丈の長さのスカートの下から脚の間にある物がバッチリと見えている。
彼女の股間部分に明らかに汗ではないシミの痕が浮かんでいる。
くっきりと形も分かるその光景に自分の股間の相棒が存在を主張し始めた。
焦りながら鞄を自分の膝の上に置いてソレを隠す。
そんな自分の様子を見ていたであろう彼女はくすくすと笑い挑発的にスカートの端を持ち上げてこちらを愉しそうに伺っている。
一点に引き寄せられる視線と視線を外さないといけないと言う理性との葛藤をしているといつの間にか電車が駅に到着。
彼女が立ち上がり電車を降りるであろうことを察して安堵する気持ちと残念な気持ちに浸る。
そのままドアの方へ向かうと思っていた彼女がこちらにやって来る。
こちらの耳元に顔を近づけて来たため彼女の匂いが自分の鼻腔をくすぐった。
柑橘系の甘酸っぱい香りに身動きが取れなくなっていると、
「えっち」
そんな言葉と悪戯っぽい笑顔を残して彼女は電車を降りて行く。