<ニキビ面の高校生>
私が高校生の頃の話だから、かれこれ50年、半世紀前のことになる。
私は九州の地方都市の県立高校に通うニキビ面の生徒だった。
勉強はできるわけでもなく、かと言って、不良というわけでもなく、ただただ目立たないどこにでもいる普通の生徒だった。
私がその妙な噂を聞いたのは高校二年生になった梅雨も明けようかという夏休み前の蒸し暑い初夏の頃だった。
小中学校からの幼馴染の友達Mからその不思議な話を聞いた。
ボクたちが住む町の川沿いの西のはずれにある県営住宅の団地の2階の部屋に行くと、変なババア住んでいて、面白いことが起こるというのである。
高校生なら、誰でもこの部屋に行っても大丈夫だという。
<10個パックの赤玉卵>
しかし、一つだけしなければならない条件があるという。
必ず、県営住宅の団地の前にあるスーパーマーケットで卵の10個パックを買って持っていかなければ、ならないというのである。
それも赤玉卵でなければならないという。
卵を買って、スーパーマーケットのレジ袋に入れて2階の部屋で行く。
もし、ドアの新聞受けに新聞が差し込んであれば、ドアにカギはかかっていないという。
新聞がない時のことは知らない。
ドアを開けて、玄関に入って、下駄箱の上に買って来た赤玉卵をレジ袋に入れたまま置く。
<カーテンの奥の白い手>
狭い廊下を挟んで、その奥左側が風呂場になっているという。
その風呂場の引き戸を開けると脱衣場になっているそうだ。
カーテンが掛かっていて、その前にパイプ椅子が置いてあるという。
ズボンを脱いで、脱衣場の床においてある脱衣籠に脱いだズボンを入れる。
上着は脱いでも脱がなくてもいいという。
そして準備ができたら、カーテンを背にして椅子に座る。
<パンツの中に入れられた手>
パンツも脱いでも脱がなくてもいいが、おしりにあたる椅子の感触が良くないから履いたままの方がいいという。
すると、カーテンの後ろから、白い手が伸びてきて、パンツの中に入れられて、大事なところを撫でまわしてくれるという。
そして大きくなったモノを優しくしごいてくれるという。
見えるのは白い手だけで、カーテンの陰で顔は見えないという。
その手指は柔らかく、吸い付くようで、触れられただけで出てしまう奴もいるという。
力いっぱい気持ち良く果てると、白い手はカーテンの陰に隠れるという。
その後は、自分でティッシュペーパーを使って飛び散ったものを拭って、置いてあるゴミ箱に捨てる。
そして脱衣籠に脱いだズボンを履いて、風呂場の引き戸を閉めて、玄関から出ていく。
<赤玉卵と交換の夢見心地>
赤玉卵は置いていく。
何も起こらなかったように。
その話を聞いて、いてもたってもいられぬようになって、我慢できずに、県営住宅団地の前のスーパーマーケットで赤玉卵を10個買って、2階のその部屋に行った。
新聞は新聞受けに差し込んであった。
ドアを開けた。
手順は何度も頭の中で繰り返したから、すべて暗記していた。
その白い手はとてもやさしくボクのパンツの中をまさぐり、時に強く、そしてぞんざいに、最後はとても優しくいとおしむようにボクの大事なものをもてあそんだ。
そして僕は夢見心地で果てた。
17歳の少年には衝撃的な事件だった。
何回かその部屋には通った。
<そしてかわいい彼女ができる>
そして18歳の誕生日前にかわいいガールフレンドがボクの前に現れた。
ボクはもう赤玉卵は買わなくなった。