『あの日、橋の下で』
俺たちがオナニーを覚えたのは、橋の下でのことだった。
花を舞い散らせた桜の木が新緑の葉を伸ばしている、あるうららかな春の日のこと。
当時小6だった俺は友人たちと共に、とある橋の下にある秘密基地へと向かった。
そこへ行くには深い草むらをかき分けていかなければならなかったが、それは外からは見えにくく人気もあまりないということでもあり、秘密の遊び場としては実に好都合だった。
とはいえ、そこを利用しているのは子供たちだけではなかった……
『男の子はお宝を前に……』
俺たちがそこを根城にしていたのは、単に隠れやすいからというだけではない。
秘密基地の前には小さいながらもコンクリートブロックで固められた雑草のない空間があり、そこにしばしば”お宝”が落ちていたからというのもある。
それはえっちな雑誌だったり、まだ動き続けているバイブだったり、あるいは秘密基地や遊びに使えそうなゴミだったり。
今思えばなかなかにばっちいが、子供の頃は自然の草木やこういったゴミをうまいこと使って基地を作るのが最高に楽しかったのは間違いない。
最初は鳥の巣のようなものだったが、試行錯誤を重ねるにつれちょっとした犬小屋っぽいものは作れるようになった。
また、小学生にはまだ早いであろうえっちな雑誌を友人と回し読みするのもエキサイティングだった。
このお年頃の男の子はおちんちんだのおまんこだのAVだのに興味津々なもの。
だからスタイル抜群なオネーチャンの水着姿にすら興奮して勃起している子もいた。
そのくらいだから、ましてや男と女が合体してズッコンバッコンやってる所なんて……
『初めては突然に』
幸いなことに、おしっこがしたくなったり、ムラムラして抜きたくなったら目の前に大きなトイレがある。
それは”川”という名前の、太古の昔から人類がお世話になってきたであろう全自動水洗トイレだ。
とはいえ、まだそのくらいの歳だと他の子のようにムラムラしておちんちんをしごいてもしごいても精液が出てこない子もいた。
一応おちんちんをいじっていると気持ち良くはなってくるけれど、それで終わりといった感じだ。
そして、その時は俺もそんな子の一人だった。
だからどこかの誰かが残していった最高のオカズを見ながら、社会の窓からぴょこんと覗くおちんちんを10分も20分もいじっていた。
だがしかし……!
オカズのページをめくり、大人のお姉さんがおまんこをくぱぁと開いている写真が出てきた時。
俺はおちんちんに、今までに感じたことのないような違和感を感じた。
何かが出てくるような、しかしおしっことはまた違うような……
……ピュッ! ピュッ! ピュ!
次の瞬間、俺のおちんちんから薄いカルピスをネトネトにしたような、変な液体が勢い良く出てきた。
それと共に今までに感じたことのない快感と疲労を感じた。
これが、精通……?
俺は出したものをティッシュで拭き取りながら、自分が大人になったのを感じた。
記憶にある中では、これが初めてのオナニーだ。
ちなみに俺だけでなく、友人たちのうちの何人かもまたこの秘密基地、あるいはその前の川で初めての射精を経験していた。
ある子は俺と同じように秘密基地の中でオカズを見ている時に初めて出たし、ある子は下半身裸の状態で他の子といっしょに川で大胆かつワイルドにしごいている時に発射した。
とはいえ今考えれば、これが大人たちに見つからなくて本当に良かったと思う。
また、今の子はこういう秘密基地は作らないものらしい。
なんでも自分の部屋でスマホやゲーム機を使って友達と遊んだり、コミュニケーションすることが多いからだとか。
草むらで虫に刺されながら不衛生な環境で集まるということをおすすめすることはできないが、子供たちの生活が変われば子供たちが経験する”初めてのオナニー”の形もまたどんどんと変わっていくんだろうな。
まあ、平成初期の昔にはこういうことがあったということで……