『伝説のA田くん』
僕が通っていた小学校にはA田くんという伝説の存在がいた。
そいつは一言で言えばガキ大将だ。
小学生でありながら中学生をボコボコにしたことがあるとか、バイクに乗った警官を転ばせたことがあるとかホントかウソか分からないような伝説がたくさんある。
そしてそいつはその幼さにして大の女好きだった。
スカートめくりとかおっぱいもみもみなんかは当たり前。
リコーダーや運動着を「借りる」こともよくあった。
しかし、A田くんはそれでも欲求不満だった。
なぜならそれくらいのことは他の男子も普通にやっていたからだ。
『ある夏の日に』
他の小学校の基準で考えればこれはかなりおかしいことなんだろうとは思う。
つまり、それくらい僕らのいた小学校では学級崩壊が進んでいたのだ。
他のクラスでは授業中に堂々と抜け出す奴がいたり、コンパスの針の部分やハサミでケンカしたりするような奴もいたらしい。
だが、A田くんはそのさらに上を行っていた。
ある夏の日、プールの授業を利用してA田くんはとある女子の服一式を手に入れた。
もちろん、それにはおぱんつも含まれていた。
とはいえこれを周りに自慢したA田くんはすぐに担任に呼び出され、「借りて」いた服を返すことになった。
どう考えてもそんなわけはないのだが、A田くんはこういう時「借りた」「もらった」と心から信じ込んでいた。
これが雑な現実逃避なのか、幼い正当化なのか何なのかは僕には分からない。
しかしとにかく、世の中にはこんな奴がいることも確かだ。
ともあれ、その場は一時これで一件落着となった。
当時は1クラスあたりの人数は少なくとも30人超が当たり前。
教師が児童1人1人のことに対して首を突っ込むなんてことはよっぽどのことでない限りあまりなく、担任は疲れた様子だった。
だが、こんなA田くんが普通に服を返すわけがないよなぁ?
確かに、A田くんは全ての服を返した。
しかしおぱんつはぐしょぐしょ、おまけに服を雑にくしゃくしゃにして丸めていたせいで他のものにも付くという大惨事になっていたのだ。
つまりはおぱんつは「使用済み」だったというわけである。
なおその時聞いたA田くんの武勇伝によれば、女子便でシコった後ぱんつを着たまま発射したらしい。
まあ、うん、ようやるわそんなん。
『vs ママ』
そんな状態だったのでその女子は保健室送りになり、また着替えを持ったママが車で迎えに来ることになった。
とはいえ普通に考えて我が子がこんな目に遭った時、ママは冷静でいられるだろうか?
いやそんな訳がない。
ママは「モンスターペアレント」というのがピッタリな形相で僕らの教室に乗り込んできた。
A田くんにつかみかかろうとするママ。
それから必死に逃げ回るA田くん。
クラスの女子もママに加勢したが、男子の多くがA田くんに加勢したこともあり、A田くんは捕まらなかった。
それどころかA田くんにはこんなことをする余裕さえあった。
「見てみて、ほーら」
A田くんはズボンをおもむろに下ろした。
するとそこにはどこの誰のものか分からない女もののパンツが……!
「キャー!」「ヘンタイ!」「ギャハハハハ!」
女子は悲鳴を上げ、男子は大爆笑。
ママは憤怒のあまりお腹を押さえて倒れ、担任はA田くんに殴りかかった。
なお、その後僕らのクラスに校長先生が来て説教をするという異例の事態になった。
もっとも、こんな動物園のようなクラスがこれでマシになるわけがなかったのだが。