『男だけはつらいよ』
私は残念ながら、男子校に通っていました。
いえ、男子校にいたことを後悔しているわけではないんです。
男子校には男子校にしかないノリというものがありますし、楽しい思い出もたくさんできました。
修学旅行もそのひとつです。
しかし、男子校には大きなデメリットが一つだけあります。
それは……女子がいないことです。
ただの一人もいないことです!
思春期の男子にとってこれは非常に大きな問題です。
なぜなら自分でも制御が難しいその大きすぎる煩悩のエネルギーを発散させる機会が少ないからです。
というわけで、修学旅行前の男たちは女の裸が見られるかもしれないなどという淡い期待を抱いていました。
ところが、それはすぐに崩壊することになります。
なぜなら宿泊先は全館貸切となっていたからです。
これは女性の宿泊客がいないことを意味します。
しかし、思春期の男たちがそれでエロを諦めて真面目になるでしょうか?
……答えは否。
外でお泊りしたらエロはセット。
こんなことはコーラを飲んだらなんとやらというくらい当たり前!
そんな昭和な風潮が当時はまだ残っていましたから、多くの悪ガキたちがエロ本やその手のグッズを持ち込んでいました。
ところが、それでは男たちは満足できません。
なぜならこんなのは普段やっていることと場所以外は何も変わらなかったからです。
そこで、とある筋金入りのワルがとんでもないことを思いつきました。
それは……
『お前、女になれ』
それは「女を自分たちで作る」ことです。
自分たちが持ってきているものをひっくり返せば、それは案外簡単なことでした。
素材に選ばれたのは体重90kg以上の”恵まれた”体型の子。
当時は今のようにお手軽で高品質なコスプレグッズなんてありませんでしたし、男の娘という概念も広まっていませんでした。
よって女装した彼はキッツキツで破れそうな服といかがわしい方法で調達されたパンツを着てピッチピチでしたし、それはとても異様なものに見えました。
例えて言うなら、ショートケーキをブチ込んだラーメンのような……
しかし、それでも女に飢えた男たちにとっては救いの神でした。
しかも相手は本当は男だからケツを触るのもスカートの中にダイブするのもOK、やりたい放題……というのが当時の観念。
地味にそれなりにある彼のおっぱいを揉んだりする奴までいましたね……。
まあ、さすがにおセックスは物理的には無理でしたが。
『その後……』
なお、彼の男の娘化はこれでは終わりませんでした。
彼は後に文化祭や卒業旅行でもそういう方面で活躍することに。
ちなみに彼は今となっては結婚もして良いパパになっており、とある会社で家庭を支えるべくバリバリ働いているそうなのですが、今は特に女装はしていないそう。
逆に彼の妻は子育て前はイケメンキャラのコスプレをして撮影をすることもあったそうです。
もしかして、これが「類は友を呼ぶ」というやつでは……
すると夫婦のエッチの時も……
いや、止めておきましょう。
ともかくまあ、昔は良くも悪くもムチャクチャできた時代だったのです。
もしあの時にSNSやスマホなんかがあったら、いくら悪ガキの悪ノリだとはいえ同じことをする勇気はありませんね……
勃起しながら女モノのパンツを着ている男の画像が拡散されまくって高校が大炎上とかシャレになりませんし。
でも今の子はスマホで自由にいくらでも刺激的なものが見られると考えると、ちょっと寂しい気持ちになるような気もします。
あそこまで必死にバカをすることもないんだろうなあと。