ある夏の日に江の島でイベントがあったので参加しにいった。
夏、しかも海がすぐそこにあるということもあり水着の上に薄着を着た人々であふれかえる。
屋台が広がり気温も高くなる日中、テンションが上がり、私は性欲などこれっぽちもなくイベントを楽しんだ。
一緒にいた仲間と釣りをしたり、屋台でチョコバナナやクレープなどを食べ歩きした。
夕日が沈むころ私はイベントを全力で楽しみ疲れ切っていた。
まだ周りには人がたくさんいたため少し人混みから離れたいと思い、仲間に一言告げイベントが行われている会場から少し離れたところまで歩き休憩していた。
海に沈む夕日を眺め、黄昏ていると「おひとりですか?」ときれいな声が聞こえてきた。
正直、自分に聞かれた質問だとは思わなかったが、あまりの声のきれいさに振り向いた。
そこにいたのは水着ではないもの白ティーシャツにデニム、サンダルを履いた夏らしい恰好の美人だった。
しかも明らかにこちらの目を見て微笑んでいる。
ドキドキしながら「そうなんです。人混み疲れちゃって」と私は答えた。
「同じだ」美人はさらに可愛らしく微笑んだ。
暗くなってきたこともあってか一際きれいに見えた。
その瞬間胸を膨らませた。
「これもしかして自分に興味があって声かけて来たのか」と。
美人は私の隣に座り同じく夕日を眺めた。
と同時に「私好きなんです、夕日に沈む太陽」とつぶやいた。
思わぬ倒置法に私の心拍はを増していき、また不純な気持ちも生まれた。
とにかく仲良くなろうと本能的に頭がフル回転した。
「よく来られるんですか?海」とっさに出た倒置法返し。
美人は「休みの日はよく来ます、ここ私のお気に入りの場所なんです」と微笑みながら話す。
そのきれいな横顔が視界に入り、私の心拍数はさらに上昇していった。
そのあとも私の心拍数は収まることなく、他愛もないはじめましての会話が続いた。
進んでいく会話の中で時々目を合わせてきたり、楽しそうにしている美人を見て、この人ともっと一緒にいたい。
もっと一緒に笑っていたい。
そう強く思った。
そして気が付いた時には食事に誘っていた。
美人の答えはイエス。
思ったより仲良くなれた自分を心の中で褒めまくった。
幸いにも仲間はまだイベントに夢中でその美人と二人で食事に行くことになった。
店に向かう途中「一人で行動してみるのもいいな」とボケっとしながら歩いていると少し前を歩く美人の手に私の指が触れた。
とっさに「すいません」条件反射のように私は言った。
すると「大丈夫ですよ、ケガしてないですから」美人はそう言い私に手の平を見せ微笑んだ。
なんて明るい子なんだ。
しかしここで疑問が生まれた。
ケガをしていないことくらいわかるしそういう意味で謝ったわけではないのだけれども。
その疑問は食事を終え、店でお会計をするときに解決した。
合計で7640円だった。
意外といい店だったらしく予想より高価な値段になった。
男を見せる時だと全額払った。
しかし美人は「私も食べたんですから払いますよ」といい半額払ってくれた。
おつりが帰ってきて1000円だった。
「なんで1000円なんだ、確かに7640円払ったのに」レシートを確認すると7740円支払っていた。
美人に「いくら払いました?」と聞くと「4320円です」と不思議そうに答えを返した。
その瞬間頭によぎった。
食事中、ドリンクバーを頼んでおきながら「飲み物まだかな」なんて言ってたことが。
最初は私も緊張していたのでボケてくれたのかと思っていたが、そのことでドジっ子なんだ。
そう確信した。
可愛らしい一面もある美人に思い切って「手をつないでもいいですか?」と言った。
美人は雲一つない晴れた表情で「いいですよ、ご飯も一緒に食べたしもう友達じゃないですか」そう答えた。
不純な理由で手を繋ごうとしたことが恥ずかしくなるくらい純粋な心、まっすぐな目だったので申し訳なくなった。
その日は何もなく美人と解散した後に仲間と合流し、帰った。
後日、連絡先を交換した私と美人は映画を見に行ったり、買い物をしたりデートっぽいことをした。
何回か会ってみて改めてドジっ子だった。
少し胸やお尻に手が触れ、私にとって興奮し、女性にとって嫌がるようなことでも気づいているのかわからないほど何も気にせずにいる。
ラッキースケベってこういうことなのかと思いながら一人で勝手に興奮していた。
それから2年たち、今では不純な気持ちも冷め、純粋にいつも明るくまっすぐなその美人に私は少しずつ惚れていっている。
そんな魅力的な美人と出会った思い出深い夏だった。