「きっかけ」
僕は関西の大学に通う一般理系四回生。
四年間、武道系の部活に所属していた。
がっつり体育会系という訳ではなく、純粋な興味から始められる真面目ではありつつ、初心者から始められる、そんな雰囲気に惹かれてこの部活に入部した。
新歓で部活について紹介してくれたのがその先輩だった。
僕は身長180センチなのだが、先輩は140センチ後半とかなり小さい。
そんな身長差を物ともせず、先輩は技について真剣に教えてくれていつしかこんな先輩になりたいと心の底から憧れるようになった。
「空白期間」
そうして三回生まで先輩とは部活の時に顔を合わせ続けていたが、先輩である限りは僕より先に引退してしまうわけで、結局三回生の終わり頃には主将の引き継ぎが行われてしまい僕は主将になってしまった。
勿論後輩達の前では指導を一生懸命こなしたが先輩がいない部活に余り身が入らず部活の楽しさが半減してしまったように感じていた。
「変化、そして恋心」
そんな日々を過ごしていたが、たまたま先輩が顔を出しに来てくれたことがあった。
突然の訪問に僕はうれしくなってしまったが、こんなチャンスはもうないのではないかと感じ、今後の部活運営に疲れてしまった悩みを聞いてもらうことを理由に相談したいと食事に誘ってみることにした。
先輩は優しくて、快諾してくれた。
そこでお酒を飲むこととなったのだが、先輩が酔う様子を初めて見た僕はその可愛さを再認識させられてしまった。
普段話す先輩から想像できないくらいに甘えてくるのだ。
男子校出身かつ童貞の僕にはさすがに刺激が強すぎ、しばらく先輩のことしか考えられなくなってしまった。
「猶予期間」
その後、先輩に会いたいと思いながら一ヶ月程度過ごしたところで先輩から思いも寄らぬ報告を受けた。
本来文系大学生は四回生で就職し卒業するはずだが、就職をやめて先輩は院進するために勉強するというのだ。
つまり、会えなくなるまでに猶予が出来る上に同時期に院進することが出来る。
頑張る先輩には大変申し訳ないことなのだが、僕にとっては好都合としか言えない状況が生まれてしまった。
これは勇気を出すしかないと、もう一度食事に誘ってみることにした。
後輩としての悩み相談ではなくデートとして。
「勇気の結果」
文面では断られてしまうのと伝えにくさを感じたので部活終わりに二人になったときに前に行きたいと先輩が言っていたスイーツのフェアに直接誘ってみることにした。
すると返事はしばらく待って欲しいと言われ、やはり出しゃばりすぎたのではないかと少し後悔した。
だが、その夜追加の返信がやってきた。
―――「良ければ、その後にカラオケでもどうですか」と。
勿論即座にOKの返事。
当然だ。
だが、当日あんなことが起こるとは想像もしていなかった。
「期待、裏切られる」
当日のデートは非常に楽しく過ごした。
趣味が似ていたこともあってその話題で盛り上がり、先輩の笑顔に心の底から癒やされた。
だが、カラオケに入ったところで先輩が改まった口調でこんなことを言った。
――「私には彼氏がいて、それは先代の主将。黙っててごめんなさい。でも、もう付き合いきれなくて今日○○君と遊ぶと決める前に関係を断ち切って来たの。」
――え。どういうことだ。
あの人と?意味が分からなかった。
先代の主将は非常に楽しい人ではあったのだが、女性と付き合おうとするようなタイプではなかったので非常に困惑してしまった。
だが、もう別れたという以上問題ないのではないかという気持ちと、そんな人につけ込んで好意を伝えては良くないという童貞丸出しの考えが対立してカラオケ中も情緒が滅茶苦茶になってしまった。
カラオケもそろそろ終わろうというところで
――「この後、私の家で飲み直さない?泊まっても良いよ?」と言われた。
どうしようか迷った。
「夜」
結局流されるままに先輩の家に来てしまった。
お互い酒好きということもあって夜中過ぎまで飲んだ。
僕は実家住みなのだが当然、終電は逃した。
というより捨てた。
先輩としこたま飲んで寝よう、そんな気持ちだった。
三時頃、寝る流れになったが自分用の布団が出てくる気配はない。
困って先輩に聞いてみると
―――「一緒に寝たら良いじゃん」
……エロ漫画かな?
と正直思ってしまったが童貞の僕は寒さに耐えかねて先輩の布団に入ってしまった。
結局手を出さず眠ることにしたのだが、手を出したのは先輩だった。
正直言って滅茶苦茶にされた。
初めては勃たないといわれるがそんなことはなかった。
キスだけでもこんなに気持ちいいとは知らなかった。
手の柔らかさも、胸の柔らかさも、想像していた何倍も興奮をかき立てられた。
先輩は初めてではないので優しくしかたを教えてくれた。
入れるときもモノを持ってそこまで導いてくれた。
挿入した時、その暖かさと滑りの良さに一気に射精感が高まってきてしまった。
先輩も一緒に楽しんで欲しいとも思ったが、童貞の僕にそんな余裕はなかった。
――――とにかく出してしまいたい。
そんな気持ちだった。
時間にしてほんの数分だったと思う。
挿入して少しも経たないうちに果ててしまった。
そんな僕に先輩は一言
――――「童貞卒業、おめでとう笑 気持ちよかった?」
僕は息も絶え絶えになりつつ、はいと答えた。
そして告白した。
先輩が1回生の頃からずっと好きだったと。
―――返事は「私で良ければ笑」だった。
これが1年以上前に起こった実話で、今これを執筆している横で膝にすり寄っている小さな彼女があの先輩だと思うと関係性は変化したなと感慨深く感じる。