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成人済み初体験・その他初体験

淡くて甘酸っぱい純情恋物語~初体験~

投稿日:2023年5月1日 更新日:

間もなく夏休みを迎えようかとする7月。

暑くてだるい4限目の数学の時間。

身の入らない僕にとっては,早く終わらないかと空虚な時間を過ごしていた。

4限目ということもあり空腹感も僕の頭を支配する。

残り10分ほどで終わるというそわそわした時間に,左隣の女子生徒から肩を叩かれて「相談に乗ってほしいことがある」と突然言われた。

言った後,その彼女はポロポロと大粒の涙を流し出した。

びっくりした僕は慌てふためいてまわりを見渡したが,気づいた者はいないようだ。

小声で「昼休みに」と返すのが精一杯だった。

彼女は,僕の基準では可愛い娘に分類できるが,隣にいながらロクに口も利いたこともなかった。

弓道部に所属していて,ランニングする姿を見かけたことがある程度の情報量であった。

いつもは悪友どもと一緒に昼の弁当を食べていたが,今日は一人で急いで食べた。

隣では彼女も弁当を広げて食べていた。

何となく喉を通らない様子が伺えた。

そして食べ終えて弁当箱を片付けだすと,彼女も食べ残っていたが弁当箱を一緒に片付けた。

言葉は一切なく,僕が立ち上がると彼女も立ち上がる。

僕が廊下へ出ると彼女も廊下へ。

目的もなく歩き出すと僕の後をついてきた。

この高校は定時制の校舎があり,夕方まで使っていない。

打合せしたかのように二人ともその方向に足を進めた。

誰も来ないだろうと思う場所に来て,僕は「どうしたん?何があったん?」と口を開いた。

彼女の悩みを要約すると「好きな人がいるけど彼の気持ちが分からない。私の方から告白し,彼も同じだと言ってくれた。しかし付き合うまでには発展しなかった。ところが数日して,彼の右腕には女の子の腕時計があった。」ということであった。

言い終えるとまた大粒の涙を流し出した。

正直言って,女の子から相談を受けたことも初体験。

ましてや目の前で泣き出す女の子も初めて。

僕は途方に暮れた。

彼とは誰で何組なのか尋ねても貝のように口をつぐむ。

内心「全く情報のない相談をされてもな。どうしろと言うのか」という思いで一杯だった。

時間はあっという間に過ぎた。

「本人に意思確認するしかないんじゃねぇ」と言ってその日は終わった。

翌日,何と彼女の右腕には男物の腕時計が光っていた。

僕は唖然とした。

好きな彼の時計らしい。

目が丸くなるとはこのことだと初体験。

昨日の相談は何だったのかという思いで,放課後,僕の方から声をかけた。

「なんか進展があったの?」と尋ねると,嬉しそうに「腕時計交換した」と言う。

「そう,良かったやん。」と内心不満であったが,笑った顔で返事を返した。

この些細な出来事も僕は忘れて前の生活に戻った。

相変わらず悪友とつるんで楽しい日々を送っていた。

その間,彼女のことが気にならなかったと言えば嘘になる。

夏休み前,再び彼女から相談があった。

その時に初めて何組の誰かということを彼女は打ち明けてくれた。

全くの接点もなく話もしたことのない奴だった。

やはり煮え切らない彼の言動らしい。

それを聞いて僕は思い切って「そんな奴止めて,俺と附き合わん?」と告った。

彼女は一瞬面くらった顔をしたが,何と頷いてくれた。

この日から僕の青春は一気に開花した。

後は自然な流れでこの恋が進展していく。

いつしか手を繋ぎ,唇を重ねるには時間がかからなかった。

初体験も自然であった。

が,心臓はバクバク。

今にも破裂して死んでしまうのではないかと思った。

その心を悟られないように一生懸命だった。

キスしたときは彼女の興奮度もいつもと違う。

そして結ばれた。

一瞬で終わった。

彼女の気持ちを考える余裕などなかった。

数か月後にこの初恋は終わった。

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