『自己紹介とはじまり』
僕は中学二年生、童貞。
これまで彼女ができたこともない。
好きな人はいるけれど、それは叶わないことだと知っていたし、だから彼女のことは今夜諦めるつもりだったんだ。
彼女、というのは、僕より十歳年上の姉のこと。
姉さんとは年が離れていたこともあり、幼い頃から僕の事をとても大事にしてくれたように思う。
両親が共働きだったということもあり、僕が高熱を出して学校を休んだ日には、一緒に学校を休んで看病してくれたこともあった。
そんな姉さんは大学卒業後、そのまま実家を出て、結婚することが決まっていた。
最後の挨拶、そして最後に過ごす実家での一夜。
今日がその最後の一夜だった。
『最後の晩餐』
仕事最優先。
そんな両親が珍しく揃った今晩の食卓は、姉さんの好物ばかりで彩られていた。
父さんは普段飲まない日本酒に手をつけ、真っ赤な顔をしながら、時折涙ぐんだりしていた。
母さんはそんな父さんを見ながら、とうとうこんな日がきたのね、と呟いたりもした。
そんな二人を見つめながら、少し寂しそうに、ゆっくりと手元のビールを飲む姉さんに、僕はドキッとした。
父さんほどではないけれど、僕も顔が熱くなってきたかも、そう感じて、冷たい麦茶を飲み干し、目の前のご馳走を片っ端から平らげることにした。
ちらっと僕を見た姉さんは、ふふふ、と笑う。
僕はそんな姉さんが、本当に可愛い、と思った。
『覗いたりはしない』
野球好きの父さんが酔いつぶれ、テレビの野球中継が終わる頃、そろそろお風呂でも入る?と母さんが言った。
僕がまだいい、と言うと、姉さんが、私少し汗かいちゃったかも、と言って先にお風呂へ。
お風呂か……すっと立ち上がる僕の様子に気付いたのか、お母さんがいいと言うまでお風呂場に近づかないこと、いいわね、と母さんに念押しされた。
分かってるよ、姉さんの嫌がることは絶対にしない。
僕だけお酒は飲んでいないのに、ずっと顔が熱くて、それを振り払いたくて、思わず外に飛び出した。
どこへ行くの、という母さんの問いかけに、素振りしてくる、とだけ伝えて。
『同じ月が見れたね』
父の影響で僕は野球を始めた。
お世辞にも上手いとは言えないし、特別野球が好きなわけでもない。
でも、気持ちがどんよりしたり、悲しかったり、やるせない時、僕は素振りをする癖があった。
ただただ、バットを振ることに集中。
するとどんどん頭の中が空っぽになってきて、夜風が火照った顔を包み込んでくれて、僕はいつもの僕に戻れた。
今夜は月が出ていた。
きっとあと数日すれば、あれは満月に変わるのだろうな、と思った。
星も出ていたけれど、薄く雲が張り付いていたせいで、月ほどはっきりと見渡すことができなかった。
そんな時、ふいに、やっぱりここの月は綺麗ね、という声が聞こえた、姉さんだ。
きっとここに僕がいることに気付いていないんだろう、風呂場の窓を少し開け、ひっそり月を見ている。
ここからだと、はっきりとは見えない。
でも、蒸気が一瞬晴れた時に垣間見えた、今の姉さんは、月よりも本当に綺麗だと思った。
『深夜二時』
お風呂空いたから入りなさい、母さんが汗だくの僕を見て、驚いた表情で告げる。
こんな日にまでそんなに熱心に練習することないのに、と言いつつ、僕の肩を優しくポンと叩いてくれた。
うん、お風呂に入って、寝る。
少し泣きそうになりながら、なんとか持ちこたえて、僕は足早に風呂場に駆け込んだ。
そして、いつもの三倍ぐらい重く感じる体で布団に潜り込むと、死んだように眠りこけた。
朝まで熟睡間違いなしだろうな、と思っていた。
そう、姉さんが、僕の夢の中に現れる、深夜二時を迎えるまでは……。
『夢?』
僕は一人でぐっすり眠っているはずだった。
あれ、と感じた時、僕の肩に、何か枕以外の温かくて柔らかいものが当たっている感触があった。
なんだ、もしかして……誰かいる?いや寝ぼけているんだろうと思った。
でもその期待は裏切られた……もちろん、いい意味で。
隣には姉のような女性がいて、僕の左腕は彼女の両腕に抱きしめられるように巻き取られていく。
まるで恋人同士のように手を繋ぎ合う。
あのね、ずっとこうしたかったの、初めては……って決めてたの、だからね。
彼女はそう言って、僕の右手をそっと握ると、そのまま彼女の下腹部へと誘った。
わかる?少し……濡れてるの、優しく触ってくれる?
彼女の吐息、ざらっとした下着の中の湿り気、豊満な胸の感触、僕は一瞬頭が真っ白になった。
『お互いの告白』
そして、僕はそれが夢でないことに気付いた。
ね、姉さん?そこに……いるの?
彼女は答える代わりに、ぎゅっと僕の左手を握った。
僕ね、姉さんのことが大好きで、でも……そう言いかけた瞬間、暗闇の中で、悲しそうに嬉しそうに微笑んだ気がした。
うん、私もよ……だからね、もっと触ってちょうだい。
彼女はそう言うと、僕の指先をその湿り気の中にそっと誘導した。
彼女の吐息、小さな喘ぎ声が聞こえる。
姉さん、感じているの?
ううん……とても、だからこのまま続けて……。
僕は姉さんの望むように、絡み合う蜜を優しく優しく、指先で集め続けた。
こんこん、と部屋をノックする時のように、あるいは、深く深くその蜜穴の最奥を目指すように。
それを何度も何度も、彼女の望む通り、続けた。
そして、彼女は、びくんと痙攣して、果てた。
僕は、それまで彼女のことを想って、一人でしてきたどんな時よりも、強く激しく勃起していた。
『最初で最後』
ちゃんと大きくなってくれて……嬉しい。
彼女は、まだ少し皮を被った僕のものを愛おしそうに指で確かめながら、ゆっくりとその口に含めた。
僕のそれは彼女の舌に絡まり、そのまま口内深くに吸い込まれていく。
き、気持ちいいよ、姉さん……。
ふっと、頬張った口元が少し緩み、そのあと、強く、でも優しく、ピストンしながら射精へと導いていった。
ご、ごめんね、口の中で出しちゃった……。
彼女は僕の言葉を気にせず、ニコッと笑い、そのまま、僕のものを飲み干してしまった。
これが最初で最後よ……ありがとう。
彼女はそう言って、少し悲し気に微笑み、僕の頬にキスをした。
『決心』
姉さん……。
僕はその表情を見て、もう我慢ができなかった。
僕も男だ、僕から彼女にしてあげたい、そう強く想った。
姉さん、いいよね……。
彼女は答えなかった。
でも僕は、それがイエスなんだと分かっていた。
さっきとは違う、僕が姉さんを……。
そう思いながら、その柔らかく大きな胸を優しく愛撫し始めた。
服の上からでも分かるほど、彼女の両乳首は僕のものと同じくらい、激しく勃起している。
もう一度、彼女の蜜穴、その前にある突起にも触れる。
彼女がビクンと仰け反るが、手を止めない。
きもちよくなってくれていいよ、姉さん。
耳元で囁くと、彼女の吐息だけが漏れた。
そして、僕のかたくなったものを、彼女の大事なものの中に、優しく、ゆっくりと沈めていった。
うううん……あっ。
彼女のものはとても狭い。
だから、少しずつ、少しずつ進んでいく。
痛くない?大丈夫?
こくっと頷く彼女。
僕は彼女をぎゅっと抱きしめて、そのまま彼女の中、深く深くまで入っていった。
そして、そのまま何度も何度も、唇を重ね合いながら……。
初めての彼女を、初めての僕が奪った、それが最初で最後の忘れられない想い出に……。
『別れと言う名の始まり』
どうしたの、こんな時間から?びっくりしたわ……。
母さんが驚くのも無理はない。
だってこれまで一度もやったことのない、朝のトレーニングを僕がやっていたのだから。
ううん、まだ気持ち悪い……。
そう言いながら起きてきた父さんも、嬉しそうに僕の練習姿を見ていた。
姉さんは……うん、僕とは違う人のところに行く。
だからこそ、あの夜のように、彼女が本当に求めてくれた時に、それに応えられる、そんな男になろう。
すっと、頬から零れ落ちるものを感じながら、僕は、ただただ強く強く、バットを振り続けた。