『聖域』
私が通っていた高校はそこそこ田舎で、学校の周りにあるものと言えば郊外にある大きめのショッピングモールくらいだった。
生徒が真面目に勉強するような学校ではないが、かと言って不良がいる程目に見えて荒れてもいない。
中学で怠けてきた学生が他に行くあてもなく入学する学校、それが私の母校だ。
勉強は好きじゃないが、熱中するほど部活や何かに打ち込んで来なかった、その上近場に遊ぶ場所もないと来ると本当に気が滅入るほどに何もできない。
さらに追い打ちをかけるように、スマホの持ち込みすら禁止するほど校則が厳しく、毎日牢獄に通うような気分だった。
当時の私にとってそんな地獄のような場所だったが、どんな場所でも救いというものはあるものだ。
生徒会室。通称、聖域。
またの名を性域とも言う。
三階建て校舎の最上階、その一番奥に位置する生徒会室は生徒にとっての聖域であり、無法地帯でもあった。
教室のカギは基本的に全て職員室で管理されており、カギを開けたら一度返却し、用事が済んだらもう一度カギを借りに行って施錠してから返却するルールだった。
しかし、生徒会室に関してのみ使用頻度の高さと先生方からの人望のお陰か、生徒会長の私が複製のカギを常に持っていた。
つまり、誰かが職員室にある生徒会室のマスターキーを借りているテイにしてポケットに忍ばせ、自前のカギを使えば先生の目を逃れて生徒会室で好き勝手出来るようになるのだ。
もちろん、巡回で見つかったら全てが終わるが、そのドキドキ感が娯楽の少ないあの学校では最高のスパイスになっていた。
持ち込み禁止のスマホで動画を観たり、カードゲームに興じたり、お菓子を食べたりと、そこで遊びの限りを尽くしていた。
『性域』
だが、単なる遊び場となっているだけなら、性域とまで呼ばれることはないだろう。
稀にではあるが、そこは性の遊び場にもなっていたのだ。
付き合っていた副会長は一年下の後輩で、特別可愛いという訳ではなかったが、猫っ毛のショートボブと愛嬌のある顔立ちが特徴的だった。
小動物の様に付いて回り、面倒な生徒会の仕事にも熱心で、この学校にしては珍しく学校生活というものに積極的な子だ。
青春らしいものへの憧れが強いのかも知れなかった。
だからだろうか、デートや恋愛にも積極的で半ば押し切られる形で付き合い始めてしまった訳だが、結果としてその選択は間違ってはいなかったようだ。
生徒会室を性域として有効活用できるようになったのだから。
『下のファーストキス』
事の発端は、ある日の生徒会活動の後だった。
挨拶運動という名の、下校生徒が校則違反をしていないか学校付近を巡回する仕事を終え、私と彼女で生徒会室に向かった。
校則で恋愛禁止を謳い、手を繋いで下校しているのを見つかるだけで反省文を書かされるこの学校では、キスすら気軽にできなかった。
ましてや、彼女とは家の方角が真逆であり、その上自分の家は遠く、学外で会うのも難しい状況だったので、忘れ物や後片付けと称して生徒会室に行き、キスだけして帰るというのが常態化していた。
だが、その時はどうも下半身が収まらず、気がついたらキスをしながら強く抱きしめて股間を押し付ける状態になっていた。
性経験はないはずだが、勃起したペニスが当たっている事に気付くと、彼女はおもむろにズボンの上からそっと撫で始めた。
意味を理解しているのか聞いてみると、射精したいって事ですよね?と小首をかしげながら確認を取るように逆に問いかけられてしまった。
耳元で囁くように言われてしまうと、最早恥も何もあったものではなく、年下の彼女に敬語で口で抜いてくださいと言葉が突いて出た。
後戻りは出来ず、またそれ以上何かをいう事も出来ず、彼女の様子を伺っていると、そっと身体を離していってしまった。
流石に早まったか、嫌われたかと戸惑っていると、入り口のカギを閉めてまた戻ってきた。
そういう事するならちゃんと気を付けないと駄目ですよ、とまるで後輩を指導するような口調で窘められる。
ああ、とかうんとか曖昧な返事をしながらも、彼女が嫌がっていないことに興奮が隠せず、パンツの布が引っかかる僅かな時間すら疎ましく思いながらジッパーを下ろしてペニスを取り出した。
一瞬たじろいたが、特に何も言う事はなくペニスの前に膝立ちしてまじまじと見つめられる。
どうすればいいのかと聞く彼女だったが、自分もどう指示すればいいのか分からず、とりあえず舐めてみてと言うより他なかった。
彼女の舌が触れた瞬間、ゾクゾクした快感が一気に足元から立ち昇る気配がした。
あまりにも慣れない刺激と、突然訪れた現実離れした光景に息が荒くなる。
しかし、気持ち良いのは間違いないのだが、とりあえず舐めるという事を繰り変えすだけなので、腰が砕ける程気持ち良いのに射精が出来ないという苦しみが始まった。
とはいえ動きを変えさせると、気持ち良くないと暗に伝えていると思われても困るし、どうしたものかと考えあぐねていると、おもむろに亀頭の先にキスされた。
急に刺激が変わったので、どうしたのかと思ったら先走り汁が垂れて来たので零れないように口を付けたらしい。
こっちはファーストキスですねと悪戯っぽく笑う彼女の笑顔は反則級に可愛く見えた。
今の刺激を続けて欲しいとお願いすると嫌な顔一つせず、亀頭にちゅっちゅっとキスを繰り返す。
やがて、いつものキスをする時のように舌を絡めたり、試行錯誤の末か亀頭を咥え始めると、ペニスが温かくてしっとりした口内に包まれて一気に射精感が高まった。
あまりにも激しい射精欲に腰が引けるが、意地悪で腰を引いたと思ったのか、彼女の口が亀頭に吸い付いて追いかけてくる。
その瞬間、弾けるように頭が真っ白になり、数十秒は射精し続けて居るのではないかと錯覚するぐらいドクドクとペニスが内側から脈打つのを感じた。
彼女は驚いて口を離そうとするが、零してはいけないと思ったのか逆に奥深くまで咥え込んでくる。
その刺激に、また目の奥がチカチカするくらいの快感が走り、たっぷりと時間をかけて落ち着いていった。
彼女は結局飲み込み切れず、口の端からぽたぽたと精液が零れるのを見てまた興奮してしまったが、流石に時間が遅くなりすぎる上に後処理を考えるとここが限界だろうと思い、ティッシュを彼女に渡しつつペニスを仕舞う。
全ての処理が終わって、気持ちよかったと彼女に感謝を伝えると、また先程の悪戯っぽい笑みを浮かべた。
そんなに気持ちよかったならまたいつでもしてあげますから言ってくださいね、と。