『昔、Amaz●nで、こっそり……』
もうだいぶ昔のことだ。
俺はAmaz●nで女物のパンツを買ったことがある。
その時俺は男子高校生だったから、普通に考えればおかしい話だ。
しかし俺は思い切ってそうした。
自分で着るために買ったのだ……
青いレースの、かわいい大人なパンティーを。
しかもセットになっていた同じ色のブラジャーも買った。
こちらもかわいらしい、ちょっとエッチにさえ感じられる雰囲気のものだ。
サイズは自分に合わせておいたから、それらが届く前はまあなんとか着られるだろうと思っていた。
だが、甘かった。
当たり前だが男は女より胸がないからブラをしてもフィットしないし、パンツは男物と比べるとキツキツだった。
元々男性器がない人のために作られているからか、股間はもっこりと息子の形にふくれてしまっていた。
『やめておけば良かったのに』
こんな状態だったのだ。
今思えば、自分の部屋で着るだけで満足しておけば良かったのは間違いない。
だが、当時の俺は何を思ったのか、それらを着たまま学校へ行った。
厚手の生地の制服を着るのだから、どうせ皆には分かりはしないだろうと思ったのだ。
ところがその日に体育の授業があることを失念していた。
体育の授業の前には体操着に着替えるから、このままではマズい……!
俺はカバンを持って、トイレの個室でこっそりと着替えた。
またこの時ブラはさすがに体操着を着ているとバレるので、カバンの中にしまった。
そして……幸運なことに激しく運動したにも関わらず、体育の時間の間は俺のパンツの件がバレることはなかった。
体育の授業が終わり、体育の授業の前と同じようにトイレで着替え終わると、俺はホッとした。
そして油断していたためか、ブラをカバンの中にしまったままにしてしまった。
その時は結構邪魔だし別にいいやと思っていたが、その時俺は思わなかった。
これがまさか、担任にバレてしまうとは……!
『弁当箱という爆弾』
帰りのホームルームにて。
俺は今日は何事もなかったと油断していると、担任が「今から持ち物検査をする」と言い出した。
なんでもドアホな男子が学校にエッチなマンガを持ち込んでいたからだとかなんとか。
いや、それよりアホウなやつがここにいるじゃあないか!!
俺は急に冷や汗が噴出してくるのを感じた。
なぜなら当時の担任は生徒指導部で体育会系の熱血漢。
持ち物検査となったらカバンやロッカー、机の中はもちろんポケットの中でさえ見逃さない。
ええい、ままよ!
俺は祈るような気持ちで、ブラを弁当箱の中に隠した。
ちなみに弁当箱は結構調べられるものであるし、こうすればブラは当然汚れてしまうが仕方がない。
その時の俺にできることは、他にはなかった。
何もしないよりはずっとマシではあるが……内心では終わった、と思った。
男子高校生のカバンからブラが見つかれば……普通は誰もが女子更衣室かどっかから盗んできたものだと思うだろう。
『相澤さんの悲鳴』
担任はまず、ロッカーの検査にかかった。
なぜならその手のロクでもないものはロッカーの奥の方にあることが多いからだ。
廊下の壁際に整列させられていた俺たちは、1人1人のロッカーの中身がクラス全員に晒されるのを時に笑いながら見ていた。
ネタになるのは大体ワルかズボラな男子のものだ。
というより、時間的な問題もあって担任は怪しい生徒のロッカー以外はまともに調べなかった。
特に女子のものなんかは開けて閉めて終わりなんてことがほとんど。
一方怪しいロッカーからはヤバいブツが出るわ出るわ……●NE PIECEのマンガやUFOキャッチャーで取ってきたという景品(確か賢狼ホ●のシュレッダーだった気がする)、それに長らく洗濯されずに放置されていたユニフォーム!
そんなブツが出るたびに、担任はキレていた。
それらが出てくるのを見ていた俺は周りと一緒に笑っていたが、俺はすぐに思い出した。
もしもカバンからブラなんか出てきたらどうなるか!?
ロッカーから出てきたマンガ等々が取り上げられた後、今度は教室でカバンと机の検査が始まった。
開けたカバンを机の上に置き、担任による審判の時を待つ。
だが、いつもと違いこの時の担任はザルだった。
放課後、担任に予定があったのが幸いした。
その時はロッカーと同じように、怪しくない生徒のカバンは詳しくは調べなかった。
そして俺はというと……良くも悪くも平凡な生徒だったため、弁当箱の中身まで調べられることはなかった。
俺のブラはクラス中に晒されるだろうと思っていたから、俺は心底マジでホッとした。
検査が終わると、俺は突っ伏して己の幸運を噛み締めた。
よっしゃ! あとはこのまま無事に帰るだけ……!
だが、俺の後ろの席の相澤が悲鳴を上げた。
女子の突然の悲鳴に、クラス中の視線がこちらを向いた。
『連行』
俺も何事かと相澤の方を向いた。
だが、悲鳴の原因は俺だった。
俺が、女物のパンツを履いていると……
俺は即座に反論した。
そんなわけがない疲れてるんじゃねーか、と。
しかし相澤は言い張った。
そんなことはない、しっかり見た、と。
それを聞いて担任は俺を面談室に連行した。
さすがにクラスの皆を前に御開帳とはいかなかったのだろう。
「おい、ズボン脱いでみろ」
そして担任は面談室に着くや否や、そう言い放った。
ああ、終わったと俺は思った。
面談室にいるのは俺と担任だけ。
そして担任は男、俺も男。
ここで断ることはできない。
俺は、しぶしぶズボンを脱いだ……
『爆弾爆発』
結局、俺は担任に全てを話すことになった。
もちろん弁当箱の中身も御開帳。
担任はそれに頭を抱えたが、意外にも懲罰は反省文だけで済んだ。
盗んだものかそうでないかは、どういうわけか担任には分かるらしい。
また、結局パンツの件はクラスで「相澤さんの見間違い」ということで処理された。
当の相澤さんは納得していなかったが、トラウマにするよりはマシだということなのだろうか。
ともあれその時ばかりは担任に感謝した……その点については、だが。
しかしあれ以降、俺は学校どころか、外に女物の下着を着ていくことはなかった。
ただし部屋ではフェミニンな服を着てオナニーしてたけどな!!
ま、バレなきゃセーフってことで!