『遊びに満ちていた、懐かしきあの頃』
遊戯王カードは私が小学生だった頃から人気でした。
もちろん勉強には関係の無いゲームのカードを学校に持ち込んで教師に見つかれば、すぐさま没収となり返してはもらえません。
しかしそれでもほとんどの男子がデッキ(遊ぶためのカードの束)を学校に持ち込むくらい、遊戯王カードは爆発的な人気を誇っていました。
とはいえ、今でこそ遊戯王は世界一のカードゲームにしてギネスにも載った王者という地位を確立しているものの、当時は「人気のあるおもちゃ」の一つに過ぎませんでした。
ブームが去ったら急速に忘れられるだろうと思っていた大人もいましたからね。
ですのでトレーディングカードゲーム専門店などというものは当時はほとんどなく、子供たちはホビーショップで遊戯王カードを購入していました。
私もよく狭いホビーショップに多くの友達と一緒に押し掛け、ミニ四駆、ラジコン、プラモデル、フィギュア、ちょっぴり怪しい雰囲気の本などに目移りしながら遊戯王カードを入手していたことをよく覚えています。
『ホビーショップでの、悪魔的な出会い』
ところがある時、私は一人でホビーショップにカードを買いに行くことになりました。
元々5人の友達と一緒に買いに行く約束をしていたのですが、その日は台風が直撃しそうだということでその子たちは皆、親に放課後にカードショップに行くことを止められてしまったのです。
一方、私はと言うと実のところ、当然ながら母からまっすぐ帰って来いと言われていました。
しかし帰りの会の時点では天気は晴れ。
風もなく、とても穏やかな雰囲気でした。
なので私は大雨なんて降らないだろうと思いそのままホビーショップに行ってしまったのです。
そしてホビーショップでは客が私一人しかいなかったため、普段はなかなかゆっくり見れないものを気の済むまで眺めることができました。
ウチには無かったミニ四駆、ティーガー戦車のプラモデル、工作に使うであろう道具の数々やモデルガン……
しかし、私の目を最も引いたのはレオタードを着た悪魔っぽい女の子が描かれた本でした。
それはR-18というレベルではありませんでしたが、セクシーな姿勢でエッチな表情をしていたということもあり、男子小学生の煩悩を刺激するには十分すぎるものでした。
結果、しばらく悩んだ後遊戯王カードのパックよりも高いその本を買って店を後にしました。
『誰もが言っていた、当たり前の結果』
その店があるビルの外では、多くの大人が予想した通りのことが起こっていました。
空はどんよりと曇り、しとしとと強めの雨が降っていたのです。
私はダッシュで家に帰りました。
ビニールに包まれているとはいえ、小学生にとっては高価な戦利品を雨で濡らしたくなかったからです。
しかし、雨は無情にもどんどん強く、どんどん冷たくなっていきました。
おまけに学校から見てホビーショップと自宅は反対方向にあったので、私はバケツをひっくり返したような雨の中、全身ずぶ濡れになりながら長い事街を駆けるはめになってしまいました。
幸運なことに自宅には無事たどり着きましたが、こんな状態の私を見て母は全てを察したようでした。
そして遊戯王カードのために危ない事しちゃダメよと言いながら、夕食には唐揚げを作ってくれました。
『こっそりと戦利品を読み、それが初めての……』
……ですが。
今回手に入れたのは遊戯王カードではありませんでした。
今までに買ったことがない、ちょっぴり怪しげでちょっぴりオトナな感じの本です!
夜に家族が寝静まってから、私はこっそりと小さな寝室用ランプを点け、件の本をそっと開封しました。
夕方の大雨でランドセルや中の教科書などはびしょ濡れになっていましたが、その本は幸いなことにまったくの無事でした。
しかも、中身は表紙負けしないくらいエッチなものでした。
それも本の中の悪魔っ娘は、当時の私には想像もできないようなアブノーマルな手を何種類も使っていました。
例えば男の子を赤ちゃんのようにひたすら甘やかし、それで相手が油断した隙に魔法で本物の赤ちゃんのように小さくしてしまうだとか、クイズに答えられなかった男の子をひょいっと頭から丸呑みしてお腹に収め、「赤ちゃんにして産んであげるね……」と言いながらお腹を優しくさすったりだとか……
ちなみに後にその子は卵の形で本当に産み落とされるのですが、その様を見て私はいつの間にか射精をしてパンツをぐっしょりと濡らしていました。
R-18ではないので最も肝心な部分は見えてはいないのですが、卵を産む時の表情や体勢、ぬるぬるとした液体に包まれた卵が股の間からごろんと転がり落ちる様、それからその前の段階の、男の子が悪魔っ娘のお腹の中でもごもごと動いている様、まるで妊婦さんかのようにぷっくり膨らんだお腹など、当時小学生だった私には何もかもがとてもエロく見えました。
そして当然のことながら、これで性癖は完全に破壊されてしまいました。
今考えても、あれは実に悪魔的な本だったと思います。
当時は今より規制がゆるかったというのもありますが、子供がいる中でよくあれを売れたなぁなんて考えてしまいますね。