遡ること僕が小学6年生の頃、好きな女の子がいました。
彼女は活発な性格で、クラスでも人気があり、彼女のことが好きな男子は何人もいました。
コトネちゃんという僕の初恋の相手だ。
僕は思いを伝えることも出来ず、たまにコトネちゃんと話しをすることだけで満足していた。
そんな小学生らしい日を過ごしていたある日、僕は衝撃的な話を耳にしてしまった。
なんとコトネちゃんに彼氏が出来たというのだ。
しかも、その相手はひとつ学年が上の中学生だ。
コトネちゃんのことが好きな男子たちはみんな悔しがっていた。
ただ、相手の情報は中学生というだけだったので、僕は悔しいというよりは、腑に落ちない感情が強く、その彼氏って誰なんだろうという疑問の方が強く残っていた。
衝撃的な彼氏報道から数日たった頃、僕はいつも通り友人のタカシくんと学校から家へと歩いていた。
タカシくんは同じサッカー少年団でもあり、放課後は一緒に帰り、一緒に練習に行く仲だった。
タカシくんがふと口を開いた。
なあ、コトネに彼氏がいるんだって。知ってた?と言う。
僕は、そうらしいね。
とあまり興味がない風を装って答えた。
タカシくんは続けて言う。
コトネの後つけてみるか?
僕は少しビックリした。
まさか行動に移してまで確認しようとは思っていなかったのだ。
それと同時に僕は、タカシくんの提案に乗ってみたくなっていた。
僕は、別に行ってもいいよと強がって答えた。
そうして、僕とタカシくんは普段の帰り道からはずれ、コトネちゃんの家と学校の中間地点にある公園へと向かうことにした。
根拠はないが、なんとなくあの公園だと思った僕たちの勘は冴え渡っていた。
公園についた瞬間に目に飛び込んできたのはコトネちゃんと学生服をきた中学生がブランコに並んでいる光景だったのだ。
僕たちは、公園の外からバレないように様子を伺っていた。
学生服の男は近くの中学校に通っている人と制服を見て分かったが、知らない顔だった。
きっと別の小学校なんだろう。
僕は知らない人だったことで拍子抜けをしてしまい、なんだか興味が薄れてしまった。
それから数分が経ち、僕たちは隠れて眺めているだけ。
もちろん話し声も聞こえない。
僕はなんだか虚しくなった。
もういいや、と思い始めていた時、コトネちゃんが公園のトイレに向かって歩き始めた。
コトネちゃんがトイレに入ったと同時に僕たちの知らない彼氏もトイレに向かって歩き始め、トイレに入っていった。
いよいよ帰ろうかと思った僕に向かって、タカシくんが目を丸くしてこちらを見ていた。
ぼくは、どうした?と聞くと、タカシくんはオカシイぞ!と少し焦ったように言った。
僕は何が?と聞くと、タカシくんは言った。
この公園のトイレは1人用だと。
1人用のトイレに2人が入っているこの状況が瞬時に理解出来なかった僕をよそに、タカシくんは公園に入り、僕に手招きしていた。
理解が追いつかないままの僕とタカシくんはトイレの裏側に来ていた。
裏側には小さな窓があったが少し高い位置にあったので、中を伺うのは小学生には難しかった。
その時、コトネちゃんの声が聞こえてきた。
なんで入ってきたの?
怒っているというより戸惑っているような声色だ。
僕は何かよくないことが起きていると思った。
コトネちゃんを助けた方が良いのかと思った。
その時タカシくんが地面に四つん這いになり、オレに乗って中の様子を見てくれと言った。
僕はコトネちゃんの危機を確かめたくなり、それに同意して窓から中を覗いてみた。
そこには中学生に壁際に追い込まれているコトネちゃんがいた。
位置は窓の真下でだった。
男に気づかれないか心配したが大丈夫そうだった。
助けた方がいいのか迷っていると、僕の目の前で2人はキスをした。
突然のことに頭が真っ白になり、そのまま眺めているしか出来なかった。
キスが終わり、2人少し離れた時に、コトネちゃんのブラジャーが見えた。
真上から見たはじめての異性の下着。
健康的な肌色と純白のブラジャーだった。
その時ようやく我に帰り、タカシくんの上から降り、言った。
大丈夫だと思う、帰ろうと。
その場から離れたかった僕はタクシくんを強引に連れて公園の外まで来た。
そして、タカシくんは何があったのか聞いてくる。
僕はキスしてた、とボソッと言うと、タカシくんは理解したように、そうかと言い、僕たちは帰路についた。
家に着いてから頭の整理をしようとしたが、なかなか消化出来なかった。
それから月日が流れ、僕たちは中学生になっていた。
たまに思い出す出来事として風化されていったが、窓から見たコトネちゃんのブラジャーだけは鮮明に覚えていた。
ある日、僕はあの日のトイレでの出来事が無性に気になってしまい、1人であの公園に来ていた。
そして、ブランコに座り物思いに耽っていると、コトネちゃんが急に現れた。
バツが悪そうにしている僕にコトネちゃんが話しかけてきた。
珍しいね、ここによく来るの?といつもの明るいコトネちゃんだった。
僕はたまたまだよと、返すと、コトネちゃんはあれ以来だね、と言った。
ビクッとコトネちゃんを見ると目にはうっすら涙が浮かんでいた。
あっけに取られた僕にコトネちゃんは続けて言った。
助けて欲しかったな。
何が何なのか分からない僕に、コトネちゃんは続けて言う。
あの時、トイレの外にいたよね。
私、すごい嫌なことされちゃって。
怖くて逃げれなかった。
僕は徐々に状況が分かってきた。
後悔で足が震えてきた。
そんな僕にコトネちゃんがごめんと言った。
そして、僕の手を取り、無言のまま一緒にトイレに向かって歩き始めた。
静止しようした僕に、コトネちゃんはいいから来てと強い口調で言い、僕はただただ従うしかなかった。
ついに2人でトイレに入るとコトネちゃんは優しい口調でまた話し始めた。
あれから私はよくここに来てる。
あの時の彼氏とはすぐに別れた。
でも、ずっと来てる。
君がまた見に来ると思ったから。
僕はコトネちゃんが何を言いたいのか分からなかった。
コトネちゃんがどんどん近づいてきて、僕を壁側に追い込んだ。
なすがままの僕はそのまま固まっていると、コトネちゃんは僕にキスをした。
目線をおろすと、ブラジャーが見えた。
変わらない純白のブラジャーと紫色に変わりきった肌をしていた。