・生業
私が以前ひょんなことからお世話になることになった仕事が「興信所」いわゆる探偵でした。
お仕事の内容的にも一番多いのはやはり不倫調査が約90%を占める割合となっており、毎日のようにパートナーの不倫を疑う方が大勢おとずれてました。
・相談
不倫調査の仕事はおもに、疑わしい対象の人間を一定時間追いかける、いわゆる「素行調査」。
業務の目的は依頼人によってもかなり変わってきますが、私が担当していたのは離婚調停で使える裁判資料の作成です。
依頼人はパートナーとの復縁を望んでいるのではなく、離婚調停に勝ち、財産分与や、子供の養育権などで優位に立つための裁判資料を必要としているので大事なのは不貞行為だという確たる証拠資料の作成が私の主な仕事です。
とくにいつもと変わらないある日のこと、とある依頼者が相談に訪れました。
その方は女性の方で結婚して3年になる旦那さんの不倫に長年悩まされていたのですが今回ついに離婚したいという決意に至ったのだそう。
・難航
旦那さんの仕事が終わる17:00から家に帰るまでの素行調査を行うことになり私達スタッフも準備を始めた。
基本的に素行調査は時間での料金が決まっており、何も成果が出なかったとしてもスタッフを拘束している時間は代金が発生するシステム。
そのため、今のようにLINEなどを使って簡単に文章や画像でのやりとりではなく依頼人の奥様と直接会い、細かい相談が必要となることが多く、事務所が閉まった深夜の時間でないと会えないなど、
旦那さんや、お子さんのいらっしゃる方が多い家庭ではよくある問題が多々ありました。
今回も調査方法としては一番多いやりかたのスポット調査。
午前中や、仕事中など、居所の把握しやすい時間帯は放置して仕事終わりや、休日出勤など、疑わしい時間帯を集中的に調査していたある日の出来事。
対象者の男性が車での仕事帰りに家とは逆方向の住宅街へ。
依頼人の奥様と年齢も近い女性ととあるマンション入口で合流し丘の上にある人気のない公園の駐車場に車を停めた。
駐車場は他の車は全く無い状態で、他の車が近くにいるとヘッドライトですぐにでも警戒されそうなぐらい。
人気のない暗い場所に車を停めて15分ほどが過ぎた。
今回依頼人の目的としている「不貞行為の証拠資料」となるには男女が公園の駐車場で車を停めているだけではもちろん不十分。
ラブホテルやマンションなどに入ってくれれば手っ取り早いが依頼人からの事前報告でも伺っていた、いわゆる旦那さんは青姦好き。
カーセックスや、路地、雑居ビル、など下手すれば人が来そうな場所がこのみだそうで今回の車の停車位置や場所柄的にかなりの確率で車内にて行為に及ぶ可能性が高かった。
スタッフの運転手を車に残して、私は真っ暗で月明かりすら全くない真夜中の公園を歩き対象となる旦那さんと女の乗る車に近づく。
・暗闇に響く
車になんとか近づいた私。
出来るだけ正面にはならないよう、出来るだけ低い姿勢で、出来るだけ音を立てず。
対象者に気づかれるといけない状況を加味したところ最後の方は匍匐前進さえも強いられたがやっとのことで車から5メートルほど離れた木の近くまでたどり着いた。
すると疑いは確信に。
対象の車はSUVの大きな車で、サンルーフから男が上半身を出し上を見上げている。
我々のカメラは赤外線カメラで特殊な状況でも撮影する事ができ、車内を覗いてみると女性は男性の股間に頭を揺らす。
少しすると、バトンタッチなのか女性がサンルーフから上半身を出し男性が女性の股間に頭を揺らす。
周辺に誰も居ないと思っている車内はさらに盛り上がりSUVが上下左右するほどまでに。
事をすませた二人はまたしばらく車に立たずむ。
カーセックスあるあるだが、ことの済んだ後に使ったティッシュを窓から捨てるか袋などに入れて、帰りのコンビニで捨てるかのどちらかが多いが今回は前者だったので、これも証拠品として押収。
仕事としてはかなりの成果を収めることに成功した。
・愚問
後日、今回の経緯を依頼人の奥様に報告、証拠品となるものや動画そして資料を全て渡す時が来た。
しかし、そこには奥様一人ではなく、仲良さげに話す男性も同席していた。
どう見てもここ最近知り合った中ではない二人の雰囲気。
どのような関係で、どのような経緯で今回の依頼に至ったかは愚問だ。