これは22歳の夏の出来事です。
僕は、彼女に振られて自暴自棄になっており、荒んだ大学生活を送っていました。
その最たる例として、大学最後の夏休みだというのに、何をするでもなく大学に通い研究室にこもる日々を過ごしていました。
出会いが欲しい
大学が理系であったこともあり、周りには異性が全くおらず元カノに振られてしまった僕にとって異性とは遠い存在へとなってしまっていた。
そんな時に見つけたのが出会い系アプリというものだった。
出会い系サイトは来たことがあるものの、携帯電話の進化により、アプリという形になったことをそのとき知った。
僕は恥ずかしさを感じながら出会い系アプリをダウンロードしてプレイした。
そのアプリは住所を入力することで、近場の女性を確認できるシステムだったので、周辺の女性にどんどんメッセージを送信した、当初課金した3000円はあっという間に無くなってしまったが、メッセージ交換を続けていると、自然と何人かの女性と密に連絡をとることができた。
見知らぬ女性からのメッセージが楽しみになっていた僕は、私生活まで元気になっていったのを覚えている。
女性とのデート
そして、一番仲良くなった女性とデートの約束を取り付けることができた、彼女の名前はさちえ(仮名)という。
初デートの場所は真夏の横浜だった。
デート自体久しぶりな僕は、自分のできる最大限のお洒落をして待ち合わせ場所にむかった。
するとそこには、肩まで伸びた艶やかな茶髪が良く似合う女の子が立っていた。
彼女は白い薄手のブラウスにデニムのショートパンツ姿をしており、僕は不覚にもそのすらっとした太ももとに見入ってしまった。
挨拶をすると、さちえは笑顔で挨拶を返してくれた。
この段階で既に心臓は破裂寸前に陥っていた。
外は38度の猛暑日。
暑さをしのぐため、僕はさちえをカフェに誘った。
誰もが知っている緑のマークのカフェである。
さちえとの会話はとても楽しかった。
今さっき会ったばかりの人なのに、話ははずみ緊張もしなくなって自然と話し笑いあっていた。
こんな経験は初めてだ。
カフェで1時間ほどお茶をして、二人で横浜コスモワールド(遊園地)に行こうということになった。
コスモワールドといえば観覧車が有名なのだが、まだ交際に発展していない、むしろ初めて会った仲なのに観覧車に乗ってよいものなのだろうか。
などの不安を忘れさせるかのように、さちえは僕の手を取り遊園地内を駆け回ったのであった。
少し汗ばんださちえはとてもさわやかなんだけど、色気があって、ちょっといい匂いがした。
彼女への恋心
夕暮れ時、遊び疲れた僕たちは、外れのベンチに腰掛け休憩をしていた。
そこでさちえといろいろなことを話した。
前の彼氏がDVをしていたこと、両親が離婚したこと。
なんでも話してくれる彼女に、自然と僕も自分の話をしていた。
するとさちえは僕が悩んでいたことがとても小さいことなんだと言わんばかりに笑顔で僕を受け入れてくれた。
そう、もうこの時に僕は彼女に恋をしていたのかもしれない。
夜になり、さちえと手を繋ぎながら横浜の街を歩いているとライトアップされた結婚式場が視界に入った。
さちえはその光り輝く結婚式場を前に立ち止まり、目を輝かせながらそのウエディングロードを眺めていた。
綺麗な結婚式場だねというと、さちえは満面の笑みで僕をみて頷いた。
その時、誰よりも彼女を幸せにしたいと心に誓ったのであった。
そのデートをきっかけに、暇を見つけてはさちえとデートをした。
レジャー施設、海、山、温泉 etc…
22歳の夏をさちえと共に謳歌することができたのだ。
告白
夏も終わりを迎えた8月の終わり。
僕はいつもふたりで遊ぶ海にさちえを呼んだ。
夏の最後、僕の人生に大きな花火を打ち上げてやろうと思い、さちえに自分の気持ちを伝えた。
君が好きだと。
するとさちえは結婚式場で見せた満面の笑みで頷いてくれた。
思わず僕はこぶしを握りしめ心の中でガッツポーズをし、涙を流しそうになるさちえを抱きしめた、強く、強く抱きしめた。
そのとき初めて抱きしめる彼女の身体はか細く守ってあげたいと心から感じた22歳の夏の出来事であった。
その後。幸せな家庭
それからときは流れ、今も僕の隣にはさちえがいます。
そして、新しい家族にも恵まれ、家族3人幸せな家庭を気づいています。
あの後、いろいろなことがありました。
もちろん全てが順調にいったというわけではありませんし、幾度となく涙を流し流された日々がありました。
そんな日々を乗り越えて今、さちえという最愛のパートナーに出会えたことを心から嬉しく思います。
もしあの時出会い系アプリにであってなかったら、今の幸せはなかったかもしれません。
そう考えると、世界で一番人に影響を及ぼすアプリは出会い系アプリなんじゃないかとすら感じます。
飛躍しすぎですかね。